ピート、磯、海藻、薬品。ラフロイグ10年について調べると、ウイスキーを褒めているのか少し心配になる言葉が並びます。しかも、これは他人の悪口ではありません。公式のテイスティングノート自体に「seaweed(海藻)」「medicinal(薬品を思わせる)」と書いてあるのです。
そして私は、そのラフロイグをハイボールでよく飲んでいます。説明だけ読めば癖の塊のような酒が、なぜ食事と合わせて楽しいのか。公式の製法説明も読みながら整理してみました。
「海藻」「薬品」は公式の自己紹介
ラフロイグ蒸溜所は、アイラ島の南側、海に面した場所で1815年に創業しました。名前はゲール語で「広い入り江の美しい窪地」を意味するそうです。国内正規品の10年は750ml、43%で、公式サイトはこの10年を「すべてのラフロイグの土台」と位置づけています。
日本でよく見かける正露丸というたとえは非公式ですが、ラフロイグ自身も香りの説明に「medicinal essence」という言葉を使っています。公式テイスティングノートに並ぶのは、ピートの煙、海藻、薬品を思わせる香り、そして少しの甘さ。飲み口には塩気とピートの層があり、余韻には甘い海藻のような印象が長く残るとされています。自分の癖をここまで隠さない自己紹介も、なかなかないと思います。
煙の強さだけなら身構えてしまいますが、塩気と甘さも同居しているところがこの銘柄の面白さです。たき火の煙だけではなく、海辺の空気やバニラを思わせる甘さまで一本の中にある。好き嫌いが分かれると言われながら長くファンがいる理由は、この単純ではない組み合わせにありそうです。
あの香りはどうやって生まれるのか
ピートは、植物が長い時間をかけて堆積してできた泥炭です。ラフロイグでは、アイラ島で切り出したピートを燃やし、その煙を発芽させた大麦にまとわせます。
サントリーの製法解説によると、湿った大麦に専用ピートの煙を当てるのは最初の12時間です。その後も18時間をかけ、ピートの熱と入り江から入る潮風を取り込みながら乾燥させます。ラフロイグ公式サイトは、この工程を「cold-smoked(低温で煙を当てる)」と表現しています。
サントリーの公式解説では、使用する麦芽の約15%を蒸溜所内で製麦しているとされています。床に大麦を広げ、職人が8時間おきにすき返す昔ながらのフロアモルティングです。残りの麦芽を外部に任せながらも、自分たちの床と窯を残しているところに、銘柄の執念を感じます。
蒸留したばかりの原酒は、バーボンを熟成した後の樽で10年間眠ります。焦がしたオーク樽から受け取るなめらかさや甘さが、強い煙と塩気を荒々しいだけで終わらせない役割を持っています。
私はハイボールで飲んでいます
ラフロイグ公式は、ストレート、少量の水を加える飲み方、氷を入れる飲み方を紹介しています。ただ、私のラフロイグはもっぱらハイボールです。魚介料理やスモーキーなチーズと合わせると抜群に合いました。アイラモルトの個性を食事と一緒に楽しみたいときに、また選びたくなる飲み方です。
後から知ったのですが、国内販売元のサントリーも、ラフロイグ1に対してソーダ3〜4のハイボールをすすめていました。ラフロイグ公式が食事合わせに挙げるのも、燻製肉、焼いた魚介、牡蠣、ブルーチーズ、焦げ目をつけた野菜。煙や塩気に負けない味を選ぶという考え方のようで、自分の好きな組み合わせが公式の路線と重なっていたのは、ちょっとうれしい発見でした。
島の一平方フィートの「地主」になれる話
調べていて面白かったのが、「Friends of Laphroaig」という無料の公式会員制度です。公式アカウントを作り、購入または蒸溜所訪問をきっかけに区画を登録すると、蒸溜所近くの土地を一平方フィートだけ名誉上借りられます。土地を所有する制度ではありませんが、区画の位置を見たり、証明書をダウンロードしたりできます。実際にアイラ島を訪れた会員には、長靴を借りて自分の区画を見に行き、地代として一杯のラフロイグを受け取る楽しみまで用意されているそうです。
もう一つ、ラフロイグの歴史にはベッシー・ウィリアムソンという人物が登場します。1934年に夏の臨時タイピストとして働き始め、後に蒸溜所を引き継いだ、20世紀にスコッチウイスキー蒸溜所を所有・経営した最初の女性です。1815年という創業年だけを覚えるより、この経歴のほうがずっと印象に残りました。
好みは分かれるらしいが、私は好きです
誰にでも飲みやすいウイスキーではないのだと思います。なにしろ公式が自ら薬品や海藻を思わせる香りを掲げているのですから、好みがはっきり分かれるのも当然です。
それでも私は、この癖の強い一本をハイボールにして、魚介と合わせて飲むのが好きです。ボトルで買うか不安なら、バーで一杯だけ試す方法もあります(国内正規品は750ml、43%、2026年7月確認の希望小売価格は税別7,410円でした。ネット通販には容量や度数の違う品も並ぶので、商品名と輸入元だけは見ておくと安心です)。
仕事が終わった夜に、煙の奥にある塩気と甘さを探しながら一杯。私にとってのラフロイグ10年は、そういう酒になっています。
お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。体質や体調に合わせ、無理のない量で楽しんでください。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。
参考にした公式情報
味や製法、商品仕様は次の公式ページで確認しました。容量、度数、価格、会員制度などは変更されることがあるため、購入や登録の前に最新情報を見直してください。
