アードベッグ10年はどんな味?強い煙の奥に柑橘と甘さがあるアイラモルト

アードベッグ10年の実物ボトル息抜き

アードベッグ10年は、私がハイボールでよく飲む一本です。あらためて公式情報を開いて少し驚いたのが、50ppmという数字と、国内販売元の「特にスモーキー」という説明でした。普段おいしく飲んでいる一杯は、数字の上ではかなり強烈な部類だったようです。

その一方で、公式ノートにはレモン、ライム、バニラ、トフィー、熟したバナナ、洋梨まで並びます。この煙と甘さの同居がどこから来るのか、気になって調べました。

よく飲んでいる一杯は50ppmだった

アードベッグ蒸溜所は、アイラ島の南岸で1815年に正式な免許を取得して創業しました。定番の10年はバーボンを熟成した後の樽で寝かせた700ml、46%のシングルモルトで、冷却ろ過をしないノンチルフィルターです(このため氷やソーダで濁ることがありますが、品質の異常ではないとスコッチウイスキー協会も案内しています。ハイボール派としては覚えておいて損のない話でした)。

50ppmというのは、蒸留前の麦芽に含まれるフェノール類の濃度です。面白いことに、蒸溜所公式は50ppm、国内販売元は50〜65ppmと、公式情報同士でも表記がそろっていません。いずれにせよ、完成品の煙たさを50点と採点した数字ではなく、蒸留や樽、熟成で印象は変わります。数字の読み方はオクトモア16.1の記事で整理しました。

公式ノートは煙より果物の名前が多い

公式が短く掲げるのは、潮のしぶき、タールを含んだロープ、強烈な煙です。これだけ読むと、かなり重そうに見えます。

ところが、詳しいテイスティングノートを開くと、レモンとライム、ダークチョコレート、焼いたバニラ、シナモン、ヘーゼルナッツ、アーモンドトフィー。味の説明には熟したバナナ、カシス、カプチーノ、焼いたマシュマロまで登場します。数えてみると、煙の描写より果物と菓子の名前のほうが多いくらいです。「特にスモーキー」と紹介される銘柄の説明としては、ちょっと意外な景色でした。

煙がすべてを覆わない理由

強くピートを焚いた麦芽を使いながら、なぜ煙一色にならないのか。蒸溜所が理由に挙げるのが「ピュリファイアー(精留器)」です。蒸留器から伸びる管に取り付けられた装置で、重い成分の一部を蒸留器に戻します。公式説明では、2回蒸留に少し余分な還流を加えることで、軽い甘さや果実香と、後半に出てくる重いピート香を組み合わせるとしています。

50ppmの麦芽を使いながらレモンや洋梨、バニラの表現が残るのは、この装置と蒸留の切り分けが関係しているようです。数字の強烈さと飲んだときの印象がずれる理由が、少し腑に落ちました。

私のハイボールには魚介とチーズ

私が特に好きなのは、アードベッグ10年のハイボールです。魚介料理やスモーキーなチーズと合わせると抜群で、食事と一緒に楽しむ飲み方として気に入っています。ストレートだけで飲む一本にしておくのは、少しもったいないと思いました。

公式の香りの説明は加水前と加水後を分けていて、水を加えた後にはバニラやナッツが開くとされています。ハイボールの泡がほどけた後にも柑橘やコーヒーが残るのか、今度はそこを気にしながら飲んでみるつもりです。

ラフロイグとどちらを先に注ぐか

同じアイラ島南岸のラフロイグ10年も、バーボン樽中心の10年熟成という似た造りです。ただ、公式が前に出す言葉は違っていて、ラフロイグは海藻や薬品を思わせる香りと塩気、アードベッグは柑橘、黒こしょう、タール、チョコレート、コーヒーです。

私はどちらのハイボールも好きなので、優劣はつけられません。魚介やスモーキーなチーズを用意した日に、その日の気分でどちらかを注ぐ。今のところ、それで十分満足しています。

一度閉鎖した蒸溜所と「アードベギャン」

調べていて印象に残ったのが、この蒸溜所の200年が順風満帆ではなかったことです。公式年表によると1981年に生産が止まり、地域では18人が職を失いました。小規模な再開と再度の閉鎖を経て、1997年にグレンモーレンジィ社が買収し、本格生産が再開されます。今の10年と世界的なファンクラブ「アードベッグ・コミッティー」が登場したのは2000年でした。

コミッティーは「蒸溜所の扉を二度と閉じさせない」という趣旨で始まった集まりで、国内販売元はファンを「アードベギャン」と呼んでいます。つまり10年は昔から淡々と売られてきた定番ではなく、復活後の中心として育ったボトルなんですね。普段何気なく飲んでいた一本の背景としては、なかなかの物語です。

煙の奥の甘さを確かめたい

50ppmという数字だけを見れば、腰が引けるウイスキーだったかもしれません。実際には、私はハイボールで気楽に飲んでいて、公式ノートには果物と菓子の名前が煙に負けないほど並んでいます。

強烈な第一印象の奥にどれだけ甘さがあるのか。次の一杯は、グラスを急いで空にせず、その変化を確かめながら飲もうと思います。

お酒は20歳になってから。飲酒運転は法律で禁止されています。体質や体調に合わせ、無理のない量で楽しんでください。妊娠中・授乳期の飲酒は避けてください。

参考にした公式情報